橋田信介氏と「覚悟」

2005.08.18

8月15日にTBSで「覚悟」〜戦場ジャーナリスト橋田信介物語〜というドラマが放送された。
戦後60周年記念ということで、終戦の日スペシャルドラマとして放送された。
橋田信介さんとは、実は生前親しく付き合いをさせていただいたので、久しぶりにこのドラマを見て、また彼を思い出し、もう橋田さんがイラクで殺害されてから1年以上も経つのかと、その時の早さにも感慨深いものがあった。


初めて橋田さんにお会いしたのは、2001年だった。
外務省の広報番組「ピースロードを行く」という番組で私の取り組みが紹介されたとき、現地コーディネーターとしてバンコクからカンボジアにいらしたのが最初の出会いだった。
1週間の取材期間中、ずっと行動をともにして、正直言うと第一印象は悪かった。
それでもカンボジアに取材に来るたびに一緒に食事したり、頼んでもないのに自分の著書をサイン付でくれたり、そうこうしているうちに段々と親しくなっていった。
最後にカンボジアにいらしたのは、確かあの事件が起こる何ヶ月か前だったと思う。
一緒に襲われた甥の小川さんと一緒にカンボジアの事務所に来て、「カンボジアに北朝鮮からの脱北者がいるという情報を得たけど、どこか知らない?」と聞くので、「知らないけど、北朝鮮人が経営する冷麺屋にとりあえず行ったらどうですか?」と答えて別れたのが最後となった。
その何ヶ月か後に、突然の訃報を聞いて、もちろん驚いたし悲しかった。
知り合いが亡くなった事もあまりなかったのに、知り合いが殺害されるなんて!
ただ同時に、「やっぱり橋田さん、イラクにいたか」「やっぱり橋田さん、イラクでも助手席に乗ってたか」「やっぱりあの帽子をかぶっていたか」と、そういうことを考え、言い方は適切ではないかもしれないけど、「橋田さんらしいな」と少しほっとした気持ちも感じた。
ドラマのタイトルどおり、橋田さんはいつでも覚悟を持っていた。
見かけは飄々としていて、決して勇猛なタイプではないけれど、芯の強さはさすがだったことをよく覚えている。
そしてご記憶の方も多いと思うが、奥様の気丈な態度。
これも橋田さんと奥様のまさに「覚悟」の為せる業だった。
俺はこれまで、カンボジアという紛争地帯でそれなりの覚悟を持って銃の回収という危険な仕事をしてきた。
これからは政治の分野に進むわけだが、その道もかなり厳しいものに違いない。
単純に「志」だけではなく、それを達成するための「覚悟」を常にもって、ぶれずに歩を進めて行きたい。
そんなことを感じた、いいドラマだった。
改めて橋田さんと小川さんのご冥福をお祈りする。
 
−橋田さんの著書一部−


イラクの中心で、バカとさけぶ―戦場カメラマンが書いた


戦場特派員