議員が議会で提案すると成功率50%

2014.08.24

こんにちは。静岡8区のげんまけんたろうです。

先日のブログで、「検討してまいります」という議会の答弁について少しお伝えしました。

地方議会の本会議というのは、ご案内の通り侃々諤々の議論が行われるなどということはなく、議員と各部局長時々知事による、予定調和のやりとりが主です。
程度の低いヤジが飛び交う国会や東京都議会もどうかと思いますが、当局は質問内容を最初から把握していて議論も何もない議会も面白くはありません。

これにはもちろんもっともらしい理屈もあります。
本会議には時間に限りがあり、各議員の持ち時間も決められているとなれば事前の調整も必要なことはこれは事実。
だから議員がどんな質問をするか、ということを事前に通告するわけです。
当局はその通告を得て本会議までに答えを準備するわけですからそれでも大変です。

議会ではどう答えるか


やっぱり曲がりなりにも公職である議員が聞いているから失礼があってはいけないと思うのでしょうか。
どんな質問に対しても基本的にはポジティブな答弁が多いです。

よくある答弁には次のようなものがあります。
「ご提案にそって進めてまいります」
「前向きに検討してまいります。」
「検討してまいります。」
「今後研究してまいります。」

絶対にやりませんなんていう答弁は当然ないわけです。
しかし、言葉は美しくてもなかなか議員の提案する政策が実現しないので、かつて調べてみたことがありました。

「前向き」はほぼ50:50


私が県議を勤めていた6年のうちの4年間に、どれくらい議員からの「提案」があり、それに対する答弁ごとにその後実現したかを調べてみたところ、次のような結果になりました。

「提案通りに進める」という答弁があればこれはほぼ確実に実現しますが、「前向きに検討する」といった場合、実現した確率は48.1%。
半分ほど実現しているということです。

「検討してまいりたい」という答弁は30.4%。
「今後研究してまいります」は10%と、ほぼ実現しないということです。

この調査は、三重県議会議員の方の調査を参考にさせていただいたのですが、三重県に比べると大分実現率は高いように思いました。

議員の本分


しかし、本会議でいきなり政策提案をしても時間的制約や議会の性質上こんなに前向きに捉えられません。

だから先輩議員にはよくこう言われました。
「だからこそ県の職員との普段の付き合いが大事なんだ。飲み食いして仲良くなって、普段からこれがやりたいから次の本会議の質問の時はよろしく頼む、とこうやるわけだ」と。

職員は優秀な方が多いですから、普段から信頼関係を気づいていくことは大切なことだと思います(ズブズブの慣れ合いや癒着はダメですが)。
政治主導と言って役人を排除するのは全くの愚であり、政治家が大きな道筋を指し示し、優秀な役人がそれを実現していく姿が望ましいことに、私達は気付かされましたから。

しかし、議員が提案しいい関係の職員が協力してくれていい答弁を引出す政策は、当然その自治体全体のためでなくてはなりません。
仮に一部の地域のことであっても、同じ自治体内で他の地域はそれをどう捉えられるのか、ということも考えていかなくてはならないはずです。
しかし私が感じた肌感覚では、自分の選挙区への利益誘導であったり、今まで遡上に上がらなかったものを取り上げて翌日の新聞に載りやすいもの、を選ぶ議員が多かったという印象です。

そうなると、当然議員同志でその政策について議論することもなく、いきなり出したほうがその人の手柄になりやすい、というようなものになりがちでした。

同僚議員がどんな理念を持ち、何を実現したいのかわからないことがほとんど


私が県議時代に感じたのは、議員間の政策議論の圧倒的な少なさです。

二元代表制である地方議員の本分は首長や当局のチェックですから国会ほど必要ないかもしれませんが、それにしても当局が出してきた議案への賛否に関し、会派で方向性を決めるのであればもっと大いに議論をし、それぞれの議員がどういう理念と価値観を持っているのか、政策議論を進めるべきだと発言してきましたが、残念ながら十分とは言えませんでした。

地方議員の質が問われる話題が多かった夏でした。

この背景のひとつに、私は議員間の議論の少なさがあるのではと感じます。
議員も議論をするならもっと勉強しなくてはいけなくなります。
議案への賛否を決める際に何も考えずに会派に右ならえでは、ますます何も考えなくなります。

他県はわかりませんが、静岡県議会では委員会において他の議員が発言したことに対して発言することができませんでした。
ですから、ある議員が「どこどこに橋をもう一本作れ」と発言した場合、他の議員は「いや、そんな橋もう一本なんかいらない」とは発言できないんです。

まあ、こんなことが提案であれば優秀な職員がそれこそ実現させないので大事に至ることはありませんが、放っておけばますます職員に頼りっきりにならざるを得ず、ますます政治家は情けない、ということにつながっていってしまいますね。